コラム

 公開日: 2015-06-23 

社長、うっかり損していませんか?!-役員報酬と在職老齢年金について考える②-

 前回は、会社従業員であるAさんのケースについて、給与および賞与の額と在職老齢年金の額の関係についてみてきました。

 第2回目である本コラムでは、会社のオーナー社長Bさんのケースではどうなるのか考えてみたいと思います。
 なお本コラムは、前回のコラム「社長、うっかり損していませんか?!-役員報酬と在職老齢年金について考える①-」の内容を踏まえたものとなっております。同コラムを未読の方は、先に同コラムに目を通されてから、本コラムを読まれることをお奨めします。

65歳未満の会社社長Bさんのケース

 計算の過程は下記のとおり、会社員Aさんのケースと全く同じです。
  a.(賞与の月額換算額)=賞与30万円×年2回÷12ヶ月=5万円
  b.(支給停止前の年金月額)=年金額60万円÷12ヶ月=5万円
  c.(1ヶ月あたりの収入額)=月給24万円+a+b=34万円
  d.(支給停止額(年額))=c-28万円÷2×12ヶ月=36万円

 B社長のケースでも支給停止額は年間36万円(月額=3万円)となり、1ヶ月あたりの収入額は、給与24万円+賞与の月額換算額5万円+(年金月額5万円-支給停止額3万円)=31万円、年間収入額は31万円×12ヶ月=372万円で、当然ながらAさんのケースと同額です。

月給を24万円→20万円に減額

 ここで、Aさんの場合と同様に年金額を増やすために、月給(役員報酬)を24万円→20万円にさげるとどうなるでしょうか?

 上記の計算式にあてはめると、a式とb式は変わりませんし、c式の月給が24万円→20万円に減ってc=30万円となります。この30万円をd式中のc部分に当てはめて計算するとd=12万円で、年間12万円が停止されます。
 支給停止月額は12万円÷12ヶ月=1万円となり、、1ヶ月あたりの収入額は、給与20万円+賞与の月額換算額5万円+(年金月額5万円-支給停止額1万円)=29万円、年間収入額は29万円×12ヶ月=348万円です。これもAさんの場合と全く同じです。

 結果として、1ヶ月あたりの収入は変更前31万円-変更後29万円=2万円の減収、年間収入額は372万円-348万円=24万円の減収となってしまい、変更前の月給(役員報酬)1ヶ月分相当の収入が失われたことになります。

減った報酬4万円と増えた2万円

 ここまでみてきたように、B社長の年金額を増やすために月給(役員報酬)を減らしても、Aさんの場合と同様に、B社長の毎月あたりの収入は31万円→29万円と2万円減少してしまいます。

 しかし、月給(役員報酬)を4万円減らしたかわりに、毎月4万円のお金が会社に残ることになり、会社とB社長をひとくくりにして毎月あたりの収入を考えると以下のようになります。

  役員報酬変更前 (B社長)31万円+(会社)+  0円=31万円
  役員報酬変更後 (B社長)29万円+(会社)+4万円=33万円→2万円増えた!!

 つまり、役員報酬を4万円減額したことで、報酬変更前より2万円増えたことになります。ではこの増えた2万円は一体なんなのでしょうか?
 実はこの2万円は、報酬減額4万円によって増えた年金月額2万円に他なりません。

「会社の金庫」と「社長の財布」

 年金受給者が会社社長の場合、月給(役員報酬)は実質的に会社から社長個人への所得の分配です。
 つまり「役員報酬を増やす=会社→社長」、「減らす=社長→会社」への所得の移動であり、誤解を恐れずに言えば、「会社の金庫」と「社長の財布」との間での「単なるお金のやりとり」と言っても過言ではありません。

 要するに「社長の財布から会社の金庫にお金の保管先を変更するだけで、年金という外から入ってくる収入が増える」ということです。これは社長自身のみならず役員に就任している奥様についても同じことが言えます。
 現在、年金を受給しながら役員報酬をもらっている社長さんやその奥様は、ご自身の年金と役員報酬について一度見直しされてみてはいかがでしょうか?

 また、役員報酬は、期首から3ヶ月以内を除いて、期中で増額減額した場合、税金計算において損金算入が認められなくなる恐れがあります。 
 従って、特に事業年度の途中で年金の受給が始まる場合は、当事業年度の会社の予想利益・予想納税額のみならず、在職老齢年金による支給停止まで考慮したうえで、期首時点の役員報酬を決定されることをお奨めいたします。

 ※本来の在職老齢年金の支給停止額の計算では、「標準報酬月額」「標準賞与額」と呼ばれるものを使用して計算しますが、当コラム中では、説明・計算をわかりやすくするために、「月給」「賞与の月額換算額」を用いています。
  「月給」「賞与の月額換算額」を使用した計算結果と「標準報酬月額」「標準賞与額」を使用した計算結果が異なる場合がありますのでご注意下さい。

 ※本コラムでは、計算上、会社にかかる法人税および社長個人にかかる所得税は一切考慮しておりません。実際に役員報酬額を決定する際は、これらの税金まで考慮する必要がありますのでご注意下さい。
 

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